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《サロメ》@デイヴィッド・マクヴィカー演出/Royal Opera House

2008年03月03日
roh-salome 2/25(月)、デイヴィッド・マクヴィカーによる新演出の《サロメ》を観に行きました。

 ついこないだも新国立劇場での《サロメ》を観、目をうるうるさせておった私。大好きな演目の別ヴァージョンを、ここコヴェント・ガーデンで観られるなんて。神様、ワタシこんなに幸せでいいんでしょうか?

 マクヴィカーはサルダナさんお薦めの演出家です。同時期に観る《魔笛》もこの人の手によるもの。あちらはライオン・キングみたいなかわいらしい趣向ですが、エロ・グロ・お耽美な《サロメ》の場合はそういうわけにはいかないでしょうね。

 ROHの公式サイトには、裸体と暴力的なシーンを含むとの但し書きがついていますし、期待はいやがおうにも膨らみます。

早朝のコヴェント・ガーデン 事前にチケットを購入してはいませんでしたので、当日券をねらって早朝からボックス・オフィス前に並びました。(そう、イギリス人はここでも並ぶw)

 私が滞在中のロンドンは、日中の気温が毎日10℃を超えるくらい温かかったのですが、まだ日が高く昇らない時間に大理石の床にじっと立っていると、さすがにしんしんと冷えました。

 熱いお茶を持参したサルダナさん、さすがは“通”。寒いときには内臓から温めるのがgoodなのでして、ワタシも母がムリヤリ持たせてくれた腹巻を着用しておりましたんで、手袋なしでも大丈夫でした。ご参考までに(笑)

200803021709162.jpg 当日券席と聞きますと、天井桟敷のリーズナブルなお席ばかりなイメージを持っていましたが、舞台に近い席もしっかりあるのね。今回確保したのは、ストールズサークルの左側、前から2列目のベンチシートです。

 舞台の眺めもまぁまぁ。左端がちょっと見切れてしまいますが、歌手の顔はちゃんとチェックできますし、前列のシートの背もたれ部分に字幕用の小さなスクリーンも付いているので、特に不自由は感じません。

 これで£40ちょっと。高いと感じるかお得と感じるかは、公演のレベルと、観る人の価値観に寄るかと。

 そうそう、ずっと首を左に向けているので、長い演目には不向きかな? 翌日は首がちょっと痛かったです(笑)
 その点、新国のバルコニー席は座席がちゃんと舞台を向いているから、ありがたいですね。


 ※この先の記事には少々ショッキングな画像もあります。血がお嫌いな方はご注意を。

 感想を読む前に……クラシック音楽ランキングもどうぞ。じわじわ上昇中。


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 シュトラウスお得意、印象的な上昇半音階とともに幕が開いたとたん、思わず息を飲みました。

 寒々とした白タイルの壁に囲まれた――ここはどこかの地下室でしょうか。二次大戦時代らしき軍服姿のナラボートと小姓。二人の番兵は肩にライフルを担いでいる。そして、素っ裸の金髪娼婦と、せわしなく立ち働くメイドの姿。

 一瞬にして、《シンドラーのリスト》や《愛の嵐》などの映画のシーンが思い出されます。

 演出に政治的な意味合いは皆無ですが、ナチズムやホロコーストのイメージを借りて、これから繰り広げられる美しくも残虐な世界観を瞬時に観客に掴ませる。ウン、この演出家のセンス、なかなか良いワ。

 舞台に井戸は見えません。後から聞いたところによると、舞台左端にマンホールのような小さな蓋があったとのこと。

 かわりに上手に大きな螺旋階段があり、ポッカリと開いた天井から青白い月光が差し込んでいます。その白々とした光が恐ろしい。

 階上では極彩色に着飾った人々がパーティをしているようだけれども、下半身しか見えません。その階上のきらびやかさと、殺風景な白い地下室とのあまりの落差。ああもしかしたら、この地下室全体が、大きな井戸の内部なんじゃないかしら――。

サロメとヨカナーン

 純白のドレスに身を包んだサロメはナディア・マイケル(と読むのでしょうか?)。華奢で、まだ成熟していない少女の脆さと痛々しさ、傲慢さ、無垢さの感じられる理想的な容姿の持ち主。

 歌唱はマズくはないけど、凄みは感じられなかったので、この演出でなければちょっと物足りなかったかもしれません。サロメ役は少女の声とオンナの声の両方を表現しなければならないと言われていますが、とすると彼女の声は、少女のままで止まっていたような印象があります。
 欲望に悶える色気ではなくて、ひたすら孤独な悲鳴だったような……。

 それに対して、ヨカナーンには大満足! 歌手はミヒャエル・ヴォレ

 “野性味”なんてモンじゃないです。井戸(つうか、マンホールw)から引きずり出され、辺りを睨みまわす形相、挙動――









 野獣よっ、野獣!



 セクシーすぎるわ!





 ありゃキング・コング並に両腕に鎖をつけたほうがいい。ウサギでも投げ与えたら瞬時にして噛み殺しちゃいそうな形相で、唸りながら舞台をウロつきまわるのよ。危険、危険!

 なのに、サロメが不用意に彼に近づくものだから。番兵もナラボートも真っ青。ライフルとピストルの銃口は、常にヨカナーンの頭部に向けられているわけ。


 萌えだわぁ~(*´Д`)


 お腹のぽよよん度もイイ感じ。

 もちろん、お声もデッカイの(*´∨`)

 あー、エエもん見たワ。はるばる海を越えて来た甲斐があったってモンです。

 新国でヨハナーンを歌ったヴェーグナーもそうだけど、ヴォレの声でなら苦手なワーグナーを聴いてもいいかなって思いましたよ。

 ヤダも~ぅ、世界には素晴らしいバリトン歌手がまだまだいるのね♪ サーが引退なさった後も、私の楽しみは続きそうデス(*´∨`)

ヘロデとヘロディアス ところで、《サロメ》のもう一つのお楽しみ、エロオヤジなヘロデですが、トーマス・モーザーはちょっと役不足だったかも。

 容姿はけっこう恵まれていると思うのだけど。

 まだまだ「成りきれて」いない感じ。小心者のキャラクターはよく出ていたけど、もう少し「君主」らしい重みがあったらなぁ……。現代読み替えだと、それは無理?

 残念なトコロはほかにもあるの。

 血で滑って転ばなかったし。

 ズルッ!
「うわぁぁ~っ」
 の、悲鳴の部分も、楽譜どおりに歌っていました。

「サ~~ロメェェ~~~~♪」
 もキレイに歌っていました。

 う~~~ん、マクヴィカーのこの演出は全体的にスタイリッシュだから、あんまり漫画ちっくなヘロデは合わないのかもしれないけれど、個人的にはヘロデは「みっともないオジサン」キャラがいいな。


 さて、最大の見せ場、「ヴェールの踊り」ですけれども、ここは実際のダンスというよりは、サロメが少女から成熟した女性へ変貌を遂げるまでの象徴的なシーンとして扱われました。

 突然舞台が暗転し、それまでの地下室のセットが回転して舞台裏へ。そして、暗黒を背景に巨大な扉のセットが下手から上手へ移動してきます。

 扉は全部で七つ。

 サロメは、その扉を一つ一つくぐり抜け、惚けたような義父のヘロデを翻弄するかのように踊ります。
 何もわからぬ子どもから、やがて男女の秘密を知るようになり、自らの美しさを武器に男を操るすべを覚えていく。

 そして――

 全ての扉をくぐり終えると、また舞台のセットが戻るのですが、ヘロデに肩を抱かれるようにして人々の前に現れたサロメ。白いシミューズ一枚で、全身濡れねずみで震えています。
 一目見て、「ああこの娘は、ヘロデに汚されたのだ」とわかりました。
 それも、自分の意思で、そうしたのです。
 ヨカナーンの首を手にいれるために。

首 処刑のシーンも圧巻でした。

 素っ裸の男が刀を構え、マンホールに降りていきます。

 首が斬り落とされるのを待つ間の静寂のなか、あれはヴァイオリンだと思いますが、耳障りな音がキュッ……キュッ……と響きますね。あの音がこんなに効果的に聴こえたのはこの演出が初めて。

 そして再び男が現れ、ヨカナーンの首をサロメに突き出す――その瞬間、真っ赤な鮮血が滝のように滴り落ちます。

 びたびたびたびたッ……!!

 舞台が近かったので、オケの演奏と重なってすさまじい音が聴こえました。心底ぎょっとすると同時に、陶酔しました。何という衝撃、何という生々しさ!
 生首を抱きしめたサロメは、長く扇情的なモノローグを、文字通り血まみれの姿で歌うのです。

サロメと生首 賛否両論はありましょうが、私はこの血まみれの演出に感動しました。

 毎月のものをはじめとして、初めて男性を受け入れる時、そして出産の際も――女性の人生は苦痛と出血をともなうものです。女性にとっての「愛」に、この二つの要素は決して切り離せないものだと思う。

「あなたの髪に触れさせて」
「あなたの肌に触れさせて」

 そう言っている間は、「愛」ではない。少女らしい、青く未熟な憧憬です。

 ネクロフェリア的なサロメの「愛」を考えるとき、どうしても実在の阿部定事件を連想してしまうのだけれども、女性の「愛」には潜在的にこのような側面があるのではないかしら。愛=所有欲だもの。

 ヒロインの歌唱に物足りなさを覚えていても、サロメがヨカナーンに口づけをするシーンでは、やはり涙で視界が滲んでしまいました。


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